2018年1月30日火曜日

【2018年1月26日】意見交換会の報告

小金井都道計画は住民自治よりも着工優先か
 第2回「意見交換会」レポート

東京都建設局が1月26日夜に小金井市内で開いた、都道3・4・11号線計画の意見交換会。前回、住民側からの主な要望である「都道計画の見直しも含めて議論すること」「都市整備局の出席」を都が持ち帰り、検討することになっていた。今回、都はいずれも拒否し、都道建設が前提であるとの姿勢を強調。会は紛糾し、今回も都は計画の概要説明に入れなかった。

■回答遅延で文書配らず 「工作」駆使してゼロ回答

 会の冒頭で都は、前回持ち帰った要望に対する見解を示そうとした。ところが都は見解をプロジェクターで示すにとどめ、印刷して参加者に配布しなかった。しかもこの中で都は、計画の必要性について従来通りの主張を繰り返した。
 これに参加者からは「要望への答えになっていない」「イエス・ノーで答えて」などと発言が相次ぐ。私も「重要な説明なのになぜプリントがないのか」と質問したが、都担当者は「自分の口から説明したかった」と述べるのが精一杯だった。
 一連のやり取りで都は、●道路は必要であり、計画を前提とした意見交換を行なう●都市整備局は出席しない●パブコメの内容を踏まえて計画を進める、などと見解を示した。前回の住民からの要望に都は「ゼロ回答」した形だ。
 これに参加者からは「(結論ありきで)議論なんてありえない」などと反発。懸案だった都市整備局の出席など、前回からの持ち帰り課題に対して都は開催直前まで「検討中」として是非を明らかにしてこなかった。見解を資料配布しなかったこととあわせ、都がゼロ回答への批判をかわそうと、「工作」に腐心した様子がうかがえる。

住民側の要望に対する都の見解を説明する
東京都建設局の徳差宣・事業化調整専門課長(写真奥)。


■住民「納得行く説明ない」

「野川やはけ一帯は市民だけでなく都民にも貴重な自然遺産。外来種が14%しかいないのは極めてまれで、日本固有の生物種の遺伝子の宝庫であり、道路建設と両立しない」
「私は(道路計画地にかかり)家を取られる立場。人の生活を壊してまで道路を作る必要性がわからない」
「ほんとうに必要なら納得するが、大きな犠牲や払い費用を使ってやらなければならないのか」
「道路ができるのは30年、40年後になる。ちゃんと議論する場を設けて欲しい」
 都道計画に対しては今回も、参加者からこれらの意見や疑問が相次いだ。しかし都は、「(都市整備局が同席し、見直しを含めた議論を行なうよう昨年12月に)全会一致で可決した市議会議長の意見書を無視するのか」との指摘にも「届いており、拝見している」とのみ答えるなど、住民と対話する姿勢は希薄だった。
 一方で都担当者からは「通常ならば(まず)測量に乗り込む、というプロセスが普通」「そもそも論は考えていない」「事業ありきと問われれば、工事の着手を考えたい」などと、住民合意よりも着工を急ぎたい都側の本音が垣間見える場面もあった。

■地域で解決する枠組みを

 こうした中、参加者からは計画に賛成する発言も1件あった。「二枚橋近くに住んでおり、長年苦しんできた。防災、生活道路を考えたときにぜひ作って欲しい」。
 散会後、発言をした方に計画賛成の意見を直接うかがいたいと思い、あいさつをした。その方は「生活道路なのに交通量が多く困っている。そもそも論ではかみ合わない。計画予定地に住む人は、その段階で計画を知っていたのでは。(道路の必要性は)都が説明している通りだと思う」という趣旨のことを話してくれた。
 二枚橋付近の生活道路がクルマの抜け道になっていることは、私も小金井市民なので知っている。狭い道で、すれ違うクルマで道がふさがれそうになる場面も見かけた。しかし、小さくない環境負荷や住民移転をともなう形で新たに道路を作るだけが解決策なのか。

 
また、そもそも住民に計画予定地であることが事前に伝わっていたかは疑問もある。「はけの自然と文化をまもる会」の安田桂子さんはこう指摘する。
 
「私も何人かの地権者に話を聞いたが、不動産屋の重要事項説明は形ばかり。『50年以上放置されているのだから今さら都道はできない』などと言われて土地購入の契約に至ったケースもある。また、計画決定前から住む住民は、家を建て替える際に数回に渡り市役所に確認に出向いたが、毎回同じ「当分道路は出来ない」という回答だったと証言している。都は計画決定に際して、地権者への個別のお知らせなども一切していない」
 住民のあいだには様々な経緯や立場、考えがある以上、道路計画をめぐっても住民の利害がかみ合わないのは前提といえる。だからこそ住民どうしが話し合い、解決を探る必要がある。当日、参加者から「いろいろ課題はあるが『道路を作らずに解決できる手法を一緒に考えましょう』という説明会なら、私たちは一生懸命意見を言いたい」との発言があったことは明記したい。
 その手間をはぶき、テクニックを駆使して着工を急ごうとする行政の手法は、住民の間に亀裂をうむ。つまり今回の小金井都道計画で都は、防災や利便性向上という大義名分のもと、地域に分断を持ち込もうとしていることにならないか。都は3月の住民説明会開催に向け、すでに会場を仮押さえしているという。

 斉藤円華(市内在住、ジャーナリスト。はけ文会員)


*便宜上、第2回意見交換会と書いていますが、意見交換会は開催はされたけど成立はしていないというのが参加したはけ文としての見解です。



◎東京都からの出席者

【建設局道路建設部】
五反田八紘
今泉浩
得差宜

【建設局北多摩南部建設事務所】
梅津嘉忠
深津岳彦
中島和久

ほか、コンサルタント2名

◎小金井市からの出席者(オブザーバー)

【都市計画課】
田部井一嘉

大谷桂輔